給与ファクタリングに関する、過去の裁判事例を解説します。

給与ファクタリング裁判

令和2年3月5日に金融庁が法令解釈に関する考えを示したことをキッカケに、同月に2つの裁判でファクタリング会社が敗訴になる判例が出ました。

 

いずれも、金融庁の法令解釈が示される前に起こった裁判で、給料ファクタリング会社が原告になって支払いをしない利用者を相手に支払いを求めた裁判でした。

 

裁判の概要

裁判のイメージ

 

令和2年に給料ファクタリングで判決が出た2つの裁判は、いずれも給料ファクタリング業者のミナミ実業が支払いをしない利用者を相手に起こした裁判です。
そして、2つの裁判は以下の判決が出ています。

 

主文 原告の請求を棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする

 

このように、給料ファクタリングを利用して支払いが滞った場合でも、裁判で支払いを命じられることはありません。

 

さらに金融庁の法的解釈が示されたことを受け、裁判所からは以下の裁判文(認定事実)が出ています。

 

  • 前提事実として原告は貸金業法3条1項所定の登録を受けていない
  • 給料ファクタリングは貸金業法や出資法にいう「貸付け」に該当するため、原告は貸金業法にいう貸金業を営む者に当たる
  • 最大で1,800%を超える利率をはじめ、全ての利用事例で貸金業法に定められた利率を大幅に上回っている
  • 本件取引は同項により無効であると共に出資法5条3項に違反し、刑事罰の対象となる
  • 不法原因給付に該当し、いずれにしても被告は交付を受けた金銭の返還義務を負わない

 

2つの判例は訴訟内容が同等だったため、裁判分の内容もほぼ同じです。

 

簡単にまとめると、違法な貸付に該当するため先払いされたお金を含めて返済義務がないことを認められたことに加え、裁判官は原告であるファクタリング業者の刑事責任・違法性を指摘しています。

 

こちらの裁判は民事裁判だったため、ファクタリング業者へ処罰を与える判決にはなっていません。

 

また、不法原因給付の場合はそれを理由に職場や事業へ悪い影響が出た部分や、精神的な苦痛に対しての損害賠償請求をできる可能性があります。

 

今回の裁判はファクタリング業者側が原告だった関係もあり、訴訟費用を原告の負担にする以外に不法原因給付へ対する損害賠償への言及はありませんでした。

 

参考元 日本ファクタリング業協会

http://www.j-factoring.or.jp/15851843641621

 

利用者から裁判を起こす際の注意点

給料ファクタリング裁判に関する注意点

 

金融庁の見解と上述で紹介した判例があるため、給料ファクタリング業者を利用して裁判を起こせば高い確率で勝訴を勝ち取れます。

 

ただし、裁判で勝訴を起こした場合でも、ファクタリング業者がその後に逃げる恐れがあるため、返金や損害賠償額を受け取れる確約はありません。

 

給料ファクタリングを提供する事業者は闇金系や反社系の所が多く、自己資金や差し押さえできる財産を持っていないことが多いです。

 

既に支払い済みのお金を返金することは困難ですが、仮に給料ファクタリング業者から未払い分の支払いを求められても裁判で負けることがないという事を覚えておくとよいでしょう。